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医療職と賠償責任保険の基礎

医療の仕事には、どれほど注意を尽くしても、思いがけない事故の可能性がつきまといます。そうしたときに備える仕組みのひとつが賠償責任保険です。ここでは、特定の商品ではなく、仕組みそのものの考え方を整理します。

木の机の上で白い書類の上に置かれた眼鏡と、そばのティーカップ

賠償責任保険とは

ウィキペディア日本語版の「賠償責任保険」の項目では、賠償責任保険とは、個人の日常生活や企業の業務の遂行、被保険者が所有・管理する施設などが原因となる偶然な事故によって、第三者に対する法律上の賠償責任を負った場合に、被保険者がこうむる損害(賠償金の支払いや負担する費用など)を補う保険のことだと説明されています。

ここでいう「第三者」とは、保険に入っている本人(被保険者)以外の人のことです。つまり賠償責任保険は、自分のけがや持ち物の損害に備える保険ではなく、他人に損害を与えてしまい、法律上の責任を負ったときに備える保険です。同じ項目では、対象となる法律上の賠償責任の主なものとして、民法上の不法行為の責任や債務不履行の責任が挙げられています。

医療の仕事と賠償責任

医療の現場では、患者さんのからだに直接かかわる行為が日常的に行われています。医療者は細心の注意を払って仕事をしていますが、それでも、予期しない事故が起こる可能性を完全になくすことはできません。事故が起こり、医療者の側に過失があったとされた場合には、法律上の賠償責任が問われることがあります。

医師の仕事に特有の仕組みとして、医師賠償責任保険があります。ウィキペディア日本語版の「医師賠償責任保険」の項目では、医師賠償責任保険は、医療事故に関して医師に過誤があり、賠償責任が生じたときに、これを補償するための保険であると説明されています。同じ項目では、医師や医療機関にとって、金銭的なリスクに備えることの重要性が増してきていることにも触れられています。

誰の責任が問われるのか

医療事故が起きたとき、責任が問われる相手は一人とは限りません。医療行為を行った個人の責任が問われる場合もあれば、医療機関を運営する法人の責任が問われる場合もあります。そのため、賠償責任保険にも、医療機関が加入するものと、医療者個人が加入するものがあります。

自分がどのような形で守られているのかは、勤務先の医療機関が加入している保険の内容や、自分自身の加入状況によって異なります。ここを曖昧なままにしておくと、いざというときに困ることになりかねません。

勤務先に確認しておきたいこと

病院などに雇われて働く医療者は、一般に、次のような点を勤務先に確認しておくとよいでしょう。

確認するときは、うわさや思い込みではなく、勤務先の担当部署や、加入している保険の契約内容にもとづく説明を受けることが大切です。

非常勤・複数の勤務先で働くとき

非常勤やスポットで複数の医療機関に勤める場合には、とりわけ注意が必要です。ある勤務先で加入している保険が、ほかの勤務先での診療にも及ぶとは限らないからです。勤務先ごとに、どのような保険が適用されるのかを確認しておきましょう。非常勤という働き方の基本は医師の非常勤・スポット勤務とはで紹介しています。

同じことは、医師以外の医療職にも当てはまります。看護師や薬剤師、リハビリの専門職なども、仕事の中で患者さんのからだに直接かかわります。職種や働き方にかかわらず、自分の仕事がどのように守られているのかを知っておくことは、安心して働くための土台になります。

保険の用語を読むときの基本

賠償責任保険の説明には、ふだんあまり使わない言葉が出てきます。たとえば「被保険者」は保険で守られる人、「保険事故」は保険金の支払いの対象となる出来事のことです。ウィキペディア日本語版の賠償責任保険の項目でも、保険事故とは保険金の支払いの対象となる事故のことであり、他人に損害を与えたことや損害賠償の請求を受けたことなど、保険の性質に応じて約款で定められると説明されています。

どのような出来事が対象になり、どのような場合が対象外になるのかは、保険ごとの約款で決められています。一般的な説明だけで判断せず、実際の契約の内容を確かめることが大切です。

学生や若手の医療者へ

医療系の学生が実習に参加する場合にも、万が一の事故に備える仕組みについて、学校から案内があることが多いでしょう。実習先で何かあったときにどうするのかを事前に確認しておくことは、自分自身と患者さんを守ることにつながります。働き始めたばかりの時期は、仕事を覚えることで精一杯になりがちですが、こうした仕組みについても一度は目を通しておきましょう。

保険より先にあるもの

賠償責任保険は、万が一のときに経済的な損害を補う仕組みです。けれども、医療の安全を守るうえで何より大切なのは、事故そのものを起こさないための取り組みです。確認の手順を守ること、ヒヤリとした経験を職場で共有すること、わからないことをそのままにしないこと、職種どうしで声をかけ合える関係をつくること。こうした日々の積み重ねが、患者さんと医療者の両方を守ります。

このページの内容は、仕組みについての一般的な説明です。個別の保険の内容や加入の判断については、勤務先や加入先、各専門職の団体に確認してください。