医療・介護しごと図鑑医療と介護の仕事と制度を、やさしく解説する独立したガイド

制度を知る

診療報酬のしくみ

病院の窓口で支払う金額の裏側には、国が定めた「診療報酬」という共通のものさしがあります。医療機関の経営や医療者の働き方にも深くかかわる、この仕組みの基本を見ていきましょう。

木の床と大きな窓がある、明るく静かな待合室に並ぶ誰も座っていない椅子

診療報酬とは

ウィキペディア日本語版の「診療報酬」の項目では、診療報酬とは、保険診療の際に医療行為などの対価として計算される報酬のことだと説明されています。日本では、保険を使って受ける診療の一つひとつについて、国が全国共通の評価を定めています。

同じ項目によれば、保険診療を行った医療機関は、実施した診療の内容にもとづいて診療報酬明細書(レセプト)を作成し、公的な医療保険に請求します。その明細書の各項目は、金額ではなく点数で表されています。そして、診療報酬の点数は厚生労働省が告示するものとされています。

患者さんが窓口で支払うのは、この診療報酬のうちの一部です。残りは、加入している医療保険から医療機関に支払われます。つまり診療報酬は、患者さん、保険、医療機関のあいだのお金の流れを決める、医療制度の土台といえる仕組みです。

誰が、どのように決めるのか

診療報酬の決定に深くかかわるのが、中央社会保険医療協議会、略して「中医協」です。ウィキペディア日本語版の「中央社会保険医療協議会」の項目では、中医協は日本の健康保険制度や診療報酬の改定などについて審議する厚生労働省の諮問機関であり、診療報酬の改定にあたって、厚生労働大臣は中医協に諮問しなければならないと定められていることが説明されています。

流れを簡単にまとめると、厚生労働大臣が中医協に意見を求め(諮問)、中医協が審議を重ねて意見をまとめ(答申)、それを受けて厚生労働省が新しい点数を告示する、という順番になります。

診療報酬が決まるまでの流れ:厚生労働大臣が中医協に諮問し、中医協が審議して答申し、厚生労働省が告示して、医療機関が請求に用いる厚生労働大臣中医協審議医療機関点数の告示諮問答申請求に用いる

定期的な改定

医療を取り巻く状況は、医療技術の進歩や物価、人手の状況、社会の高齢化などによって変わっていきます。そのため診療報酬は、一度決めたら終わりではなく、原則として定期的に見直されます。見直しにあたっては、中医協での議論を通じて、どの医療行為をどのように評価するかが話し合われます。

改定の内容は、厚生労働省が公表しています。たとえば、厚生労働省のウェブサイトには令和6年度の診療報酬改定についてのページが設けられ、改定に関する資料がまとめて掲載されています。個々の改定で何が変わったのかを知りたいときは、こうした公式の資料にあたるのが確実です。

改定の情報を読むときの心がけ

改定の時期が近づくと、さまざまな解説や見通しが飛び交います。その中には、決定前の議論の段階の情報や、特定の立場からの見方も含まれています。実際に何が決まったのかを確かめるには、厚生労働省が公表する告示や通知、中医協の資料といった一次情報にあたることが大切です。自分の職場にどう関係するのかは、所属する医療機関の担当部署に確認しましょう。

医療機関にとっての意味

医療機関の収入の多くは、診療報酬によって決まります。そのため、診療報酬の改定は病院や診療所の経営に大きな影響を与えます。ある医療行為の評価が見直されれば、医療機関はそれに合わせて体制を整えたり、サービスの提供の仕方を工夫したりします。

診療報酬には、特定の職種の配置や、一定の体制を整えていることを評価する項目もあります。このため、改定の内容は、医療機関がどのような職種を何人配置するか、どのように勤務を組むかといった働く人の環境にも関係してきます。病院経営と制度の関係は病院・介護施設の経営を読む基礎でも触れています。

働く人にとっての意味

医療の現場で働く人にとって、診療報酬は遠い世界の話のように感じられるかもしれません。けれども、カルテへの記録や、定められた基準を満たすための手順など、日々の業務の中には診療報酬の仕組みとつながっているものが少なくありません。記録が不十分だと、行った医療行為が適切に評価されないこともあります。

また、医療事務の仕事では、診療報酬の知識そのものが専門性の中心になります。医療機関のさまざまな職種が、自分の仕事が制度の中でどのように位置づけられているのかを知っておくことは、チームで働くうえでも役に立ちます。

患者さんにとっての意味

診療報酬は、患者さんにとっても無関係ではありません。窓口で支払う金額は、受けた医療行為の診療報酬をもとに計算されるからです。同じ内容の診療であれば、全国どこの医療機関で受けても基本的に同じ評価になるのは、この共通のものさしがあるためです。

医療機関の窓口で受け取る明細書には、どのような医療行為が行われたのかが記されています。内容がわかりにくいときは、医療機関の窓口で尋ねてみるとよいでしょう。自分が受けた医療の中身を知る手がかりにもなります。

介護報酬との関係

介護保険のサービスについては、診療報酬とは別に「介護報酬」という仕組みがあり、介護サービスの対価が定められています。医療と介護の両方にまたがるサービスもあるため、両者の関係を意識しておくと、制度全体が理解しやすくなります。介護保険については介護保険制度のしくみで解説しています。