医療・介護しごと図鑑医療と介護の仕事と制度を、やさしく解説する独立したガイド

制度を知る

病院・介護施設の経営を読む基礎

病院や介護施設は、人の命と暮らしを支える場であると同時に、職員を雇い、設備を整え、運営を続けていく組織でもあります。医療や介護の経営を理解するための基本的な枠組みを見ていきましょう。

木の机の上に重ねられた無地の書類フォルダーと万年筆

医療機関の経営の特徴

一般の企業は、自ら商品やサービスの価格を決めることができます。これに対して、保険診療を行う病院や診療所、介護保険のサービスを提供する事業所では、提供するサービスの対価の多くが、国の定める診療報酬や介護報酬によって決まっています。価格を自由に決められないという点が、医療や介護の経営の大きな特徴です。

そのため、医療機関や介護施設の経営は、制度の動きに大きく左右されます。報酬の改定があれば収入の見通しが変わり、求められる体制や人員の配置が変われば、運営の仕方そのものを見直す必要が出てきます。経営を理解するには、まずこうした制度の枠組みを知ることが出発点になります。診療報酬については診療報酬のしくみで、介護保険については介護保険制度のしくみで解説しています。

医療法人という形

病院や診療所を運営する主体には、国や自治体、大学、個人などさまざまなものがありますが、民間の医療機関で多く見られるのが医療法人です。ウィキペディア日本語版の「医療法人」の項目では、医療法人とは、病院、医師や歯科医師が常勤する診療所、介護老人保健施設または介護医療院の開設や所有を目的とする法人であると説明されています。

同じ項目によれば、医療法人の制度は、医療法の改正にともなって設けられたものです。医療法人は、医療という公共性の高い事業を安定して続けていくための法人の形として位置づけられており、一般の会社とは異なる決まりのもとで運営されています。病院の経営を考えるときには、その医療機関がどのような法人によって運営されているのかを知っておくと、組織の成り立ちが理解しやすくなります。

地域の医療計画

病院の経営は、その病院だけで完結するものではなく、地域全体の医療の体制の中に位置づけられています。そのための仕組みが、都道府県が定める医療計画です。医療計画は、地域でどのような医療を、どのような体制で提供していくかを示すもので、病院の役割分担や連携のあり方にも影響します。

医療計画に関する国の通知や資料は、厚生労働省のウェブサイトの医療計画のページにまとめられています。医療機関が自らの役割をどう位置づけるかは、こうした地域の計画と切り離して考えることはできません。

電子カルテと情報化

医療機関の運営を大きく変えてきたもののひとつが、情報化です。ウィキペディア日本語版の「電子カルテ」の項目では、電子カルテとは、医師や歯科医師が診療の経過を記入していた紙のカルテを電子的なシステムに置き換え、電子情報として一括して編集・管理し、データベースに記録する仕組み、またはその記録のことだと説明されています。同じ項目では、紙のカルテに比べて保管の場所をとらないことや、病院内のさまざまな場所から閲覧できることなどが利点として挙げられています。

厚生労働省の医療分野の情報化の推進についてのページでは、地域の医療機関どうしで必要な情報の連携を進めることが重要だとされ、医療情報システムの安全管理に関するガイドラインの整備や、医療情報の標準化などの取り組みが紹介されています。同じページでは、情報化によって、これまで紙でやりとりしていた院内の業務や医療機関のあいだの情報連携が効率的に行えることが期待されるとも説明されています。

人が支える組織

医療や介護は、人が人を支える仕事です。そのため、病院や介護施設の経営において、もっとも大切な資源は働く人たちです。医師、看護師、薬剤師、リハビリの専門職、介護職、事務職など、多くの職種がそれぞれの専門性を発揮できるように、人を育て、働きやすい環境を整えることは、経営の中心的な課題です。

医師の働き方改革にみられるように、働く人の健康を守りながら医療を続けていくことは、制度の上でも求められるようになっています。職種どうしで業務を分担し合う工夫や、情報化による事務の効率化は、働く人の負担を軽くし、本来の専門的な仕事に集中できる環境をつくることにもつながります。

介護施設の経営

介護施設や介護事業所の経営にも、医療機関と似た構造があります。収入の多くは介護保険の報酬によって決まり、提供するサービスの種類によって、必要な人員や設備の基準が定められています。介護の仕事は、利用者さん一人ひとりに時間をかけて向き合うことが求められるため、人材の確保と定着は、介護の現場でもとりわけ大きな課題となっています。

介護老人保健施設のように、医療法人が運営できる介護施設もあり、医療と介護の経営は互いに重なり合っています。地域包括ケアの考え方のもとで、病院と介護施設、在宅のサービスが連携することは、それぞれの運営のあり方にも影響を与えています。

経営の視点をもつということ

医療や介護の現場で働く人にとって、経営は縁遠い話に感じられるかもしれません。けれども、自分の職場がどのような法人によって運営され、どのような制度のもとで収入を得ているのかを知ることは、職場の方針や変化の理由を理解する助けになります。記録の正確さや業務の工夫といった日々の仕事も、組織全体の運営につながっています。制度の全体像は医療・介護の制度を読むための基礎知識で紹介しています。